毎日休みなく働いているタクシー運転手の宇佐美浩二(木村拓哉)。
娘の入学金や車検代、家の更新料など次々とのしかかる現実に、頭を悩ませていた。
そんなある日、浩二のもとに85歳のマダム・高野すみれ(倍賞千恵子)を東京・柴又から神奈川・葉山にある高齢者施設まで送るという依頼が舞い込む。
最初は互いに無愛想だった二人だが、次第に心を許し始めたすみれは『東京の見納めに、いくつか寄ってみたいところがあるの』と浩二に寄り道を依頼する。
東京のさまざまな場所を巡りながら、すみれは自らの壮絶な過去を語り始める。
たった1日の旅が、やがて二人の心を、そして人生を大きく動かしていくことになる――
隅田公園・言問橋
戦後の記憶が息づく、静寂と語りの舞台――隅田公園・言問橋
映画『TOKYOタクシー』の中で、倍賞千恵子さん演じる高野すみれが、戦後の記憶を語る重要なシーンの舞台となったのが、隅田川に架かる「言問橋」。隅田公園に東京大空襲の追悼碑が静かに佇むこの場所は、すみれの人生の節目を象徴するロケーションとして選ばれました。
タクシー運転手・宇佐美(木村拓哉さん)とすみれが心を通わせ始めるきっかけとなるこの橋は、ただの交通インフラではなく、東京の歴史と人々の記憶をつなぐ“語りの場”として描かれています。映画を通して、言問橋の持つ静かな力強さと、過去と現在を結ぶ情緒をぜひ感じてください。
写真はモニターを覗き込む山田洋二監督と山田組のスタッフです。カメラマンは監督と長年二人三脚で阿吽の呼吸が伝わってきました。


上野恩賜公園・不忍池
都会の喧騒の中にある、心の休息地――上野恩賜公園
『TOKYOタクシー』の物語の中盤、宇佐美とすみれが寄り道するのが、東京を代表する緑のオアシス「上野恩賜公園」。スワンボートが浮かぶ不忍池のほとり、ベンチに腰掛けて語り合う二人の姿は、観る者の心に静かな感動を呼び起こします。
桜の名所としても知られるこの公園は、文化施設が集まる知的な空間でありながら、誰もがふと立ち止まりたくなるような温もりを持っています。映画では、すみれの人生の“寄り道”として、そして宇佐美との心の距離が縮まる象徴的な場所として描かれ、東京の魅力を再発見させてくれるロケ地です。
写真は寒い冬の曇り空の下のロケ現場で、94歳とは思えないほどにとても元気な山田洋二監督です。


ロケ地マップ(全域)

